細菌感染による全身不随
肩まわりの痛みを頚椎の異常のためと思われていたのが、実は頚椎付近に発生した膿によるもので、処置が遅れて血液まで細菌感染してしまい、首から下が麻痺してしまった方の事例です。
本人の経過を直接見たわけではなく、その方の奥様から聞いた経過を記していきます。めったに出会わない事例です。しかしだからこそ、その可能性を常に考えながら患者さんと向き合わないと見逃してしまい、このような大事になってしまいます。
今回もご主人が行きつけの整骨院で筋肉が痛いからと施術を受けていたのですが、あまりにもおかしいと思った奥様が僕に話をしてくれました。その話を聞いて僕が細菌感染かもと伝えた後、奥様がご主人を説得して違う病院に行かせたのですが、そこでもわからずその後全身不随となってしまいました。
必ずしも病名まで当てる必要はないですが人の不調に携わる職業にいる限り、まさかという事態に遭遇する可能性はあります。ですから今回の事もみなさんのお役に立てたらと、奥様の了承を得て記します。
・時系列
発症する2週間前
毎日通っているジムで筋トレをした後、肩まわりが痛む。
その日の夜中に肩から背中が激しく痛み、腫れたような状態になり、熱感も出ていた。
救急で受診するが、筋肉の炎症と診断され、痛み止めを処方される。
その後
痛み止めの薬を飲んだり行きつけの整骨院で筋肉をほぐしてもらったりして痛みが和らぐ→翌日腫れて痛みが再発という生活を繰り返す。
夜になると特に痛みが強く出る。また、時々痛みで朝に起き上がれなくて奥様が起こすというような事が何日か起こる。
発症3日前
当院に奥様が来院。その時に先ほどのような状況を僕に教えてくれる。
細菌感染じゃないのかと奥様に伝えると、奥様がご主人に別の病院で診てもらうように説得する。
発症前日
別の病院で診察。頚椎の圧迫による痛みだろうと診断され、頚椎の手術をしましょうということで帰宅。
その夜に腕や脚が痺れだし、全身が痺れて動けなくなり救急車で診察した病院へ運ばれる。
頚椎を緊急オペしようと切開した時に頚椎の前方に膿が溜まっているのを発見し、血液まで細菌感染しているのがわかり、集中治療室で抗生物質投与や血液クリーニングを行う。
呼吸も自力でできずに喉を切開して呼吸を確保するような状態までになってしまう。
意識ははっきりしているが現在も不随状態が続き、血液クリーニングは6週間くらいかかるとのこと。奥様も毎日側にいて一刻も早く良くなってもらうことを願うのみです。
この方は筋肉を痛めてるとしか考えず、大事と考えていませんでした。しかし痛み方が尋常でなない様子です。また完全な炎症による症状です。
病院も整骨院の先生も全く気づかずに残念ながら最悪の段階まで進んでしまいました。僕も頭のどこかに「まさか」という思いがあったので内科でしっかり診てもらってと強く言えなかったのが本当に申し訳なく思います。
細菌感染ではこのような症状や状態が起こることがあると、ぜひ皆さん心に留めていてください。
【ご案内】コリ物質から身体を改善させていく技術に興味をお持ちいただけた方へ
当方の考えが詰まった小冊子と毎月技術セミナーを開催しています。ぜひ参考にしてみてください
セミナー開催日
1月22日日曜10時〜13時
2月26日日曜10時〜13時
3月26日日曜10時〜13時
関連記事
-
なぜ?なぜ?と生徒に追及させる ~考える事を身に付ける~
「本当に技術を身に着けたい人のための少人数、徹底指導の技術スクール コリトリスクール」二期生第3回
-
【生理周期の改善と肩コリの消失】30代女性
症状、経過 今まで2ヶ月くらい生理が来ない事が多々あったが、今はほぼ規則正しく生理が来るようになっ
-
僕たちの仕事は掛け算九九を覚えることが全て
今、同業者の方たちに向けてセミナーやスクールなどを行っていますが、たくさんの受講生の方たちから悩みを
-
肩甲上腕リズムから考える 「肩甲棘内側」の重要性 ~動くという事は軸を考える~
肩の可動域が悪い。 この場合、肩甲骨の可動域の改善を考えます。それは腕の動きには肩甲骨の動きが
新着記事
-
【実演動画有】2回の治療で治癒した五十肩(肩関節周囲炎)の解説と治療法の実演
実際に来院して治癒した半年動かせなかった五十肩(肩関節周囲炎)の原因個所を解説します。そしてアプロ
-
マッサージでほぐれないコリの正体と新しいほぐし方の理論3つ
この記事ではマッサージの様な筋肉を揉んだり押してもほぐれないコリや痛み、または何十年と付き合ってい
-
【動画有】仰向けで癒着を潰せばガチガチの肩上部(肩井)の肩こりはほぐれます
鉄の様に固まった肩上部の肩こりは筋肉を揉むのではなく仰向けで筋膜や頚椎の癒着を潰せばほぐれます
-
【ギックリ腰治療動画】寝返りや靴を履く事が出来ない腰痛を3Dストレッチで解消
酷い腰痛やギックリ腰の原因の多くは関節の連動性の欠如です。今回はその関節の連動性を戻す治療で痛みが
-
【動画有】後頭下筋群をほぐすには骨と筋膜の癒着を指圧で狙え
頭の付け根のコリをほぐすにはうつ伏せよりも仰向けです。また、反対の目の方向に押す等圧の方向を決めて
PREV :
脊柱管狭窄症 40代男性
NEXT :
施術者の施しと受け手の身体は鍵と鍵穴