突然耳が聞こえ辛くなる 30代女性 知識を当てはめるのではなく、まずは目の前の身体を知る事
症状
二週間前から耳が突然聞こえ辛い状態が出るようになる。常時ではないが疲労やストレスを極度に感じると発症する。
同時に胃もムカムカして気持ちが悪い。食欲はあるのだが食べれない。肩こり首、背中のコリがひどい。
近況
3カ月前から祖母が入院してしまい、その看病で毎日通院したり、要望を叶えてあげたりして心身に疲労があった。そして一週間前に祖母がご逝去されて、ご両親がいないので葬式も本人が行って大変だった。
また日常的に肩こり首コリがひどい。小説執筆しており、年に3~4本執筆活動で毎日が忙しい方である。また先代から引き継いでいる不動産の管理もしていたり大学時代からの研究もやっていたりととにかく忙しい方である。
経過
最初の治療後、4日ほど難聴がほとんど出なかった。しかしその後はまた発症するようになった
一週間後の治療後は発症しなくなった。
ポイント
過度なストレスにより難聴が起こってしまいました。そのストレスにより影響された身体をリセットしてあげる事で解消します。
今回の場合は下記の3点を意識して施術します。
1耳周囲の髪際や下顎骨関節突起の後ろ側(口を開けた時にくぼむ所)
2肩上部(肩井)の僧帽筋の裏側、みぞおちの肋骨の裏側、足の親指と人差し指の水かき部分
3頭や背中を眠ってしまうくらいの心地よさでマッサージ
運動器系の疾患ではなく、原因不明の症状は中医学的な身体の見方が効果的です。
そして中医学的な身体の状態を知るとどのように施術をしたらいいのかが明確になってきます。
中医学は「難しそう」、「鍼灸師しか使いこなせないのでは」と思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。誰でも習えば理解しやすい基本的な知識を身に付ければどの施術にも応用は可能なのです。
今回の症例を解説しますと
まず大原則として中国医学では何かしらの痛みや症状が出る法則が二つあります。
一つは気血が通らなくなると症状や痛みが発症します。
もう一つは気血が足りなくなって栄養されないと症状や痛みが発症します。
この二つに当てはまる原因を追究していけばいいのです。
今回の場合
患者さんには数か月前より過度のストレスがかかってしまいました。しかも普段から仕事が多忙で気が休まらず、ストレスのかかる生活を送っていました。そこへ過度のストレスがかかってしまったのです。
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強いストレスを受けると中国医学では「肝」という臓器がやられてしまいます。(僕たちが知っている肝臓なのですが、中国医学では少し働きが違います。なので肝臓と言わずに肝と言います。)
↓
肝は強いストレスを受け続けると、肝の熱エネルギーである肝気が暴走してしまい、身体を痛めつけてしまう火に変わってしまいます。それを肝火と言います。
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火は自然界と同じように上に上がる性質を持っているので、肝に火が起こると頭の方へその火が上昇してしまうのです。
↓
上半身に回った火は肝に関係する箇所の気血を通らなくしてしまい、何らかの症状を引き起こします。今回はその一つとして肝と関係性の強い耳の経絡(気血の通る道)に肝火が及んでしまい、耳の気血の流れを止めてしまったので難聴になったのです。
↓
また、胃のムカムカも肝火のせいです。肝の経絡は胃のすぐそばを通ります。ですから肝火が経絡を走行中に胃も攻撃を受けてしまい、胃がムカムカするのです。
ですので、治療法としてはこの全身にはびこった肝火を除去する方法となるのです。
そこで先述の施術ポイントの1と2はこの肝火を除去するポイントです。3は肝火が起こる原因であるストレスを除去するためにリラックスして頭をクリアにしてもらうためです。
このように身体を理解して原因を把握し、その原因に一番適した施術を施すことが人の身体を良くする施術となるのです。
しかし、多くの施術者は「難聴、耳鳴りだからこれをやる」というような「何々にはこれ」という方法論に人は依存しがちです。そしてその方法論ばかりを知りたがります。
しかし、そんな知識ばかり身に付けても人を良くすることは出来ません。それは目の前の人の事を何も知ろうとしていないからです。目の前の身体の事をきちんと理解せずに知っている知識、聞いた知識を当てはめるだけの施術は効果がない事がほとんどです。
なぜならば同じ症状でも原因が様々なので、この方法がすべての原因に通用するという施術方法などこの世にないからです。
大事なことは目の前の身体の原因を徹底的に知り、その原因一つ一つに一番適した施術を当てはめていくという「目の前の身体ありき」が大事なのです。
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