才能がないから解ったこと
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施術者向け
僕が今、こうやって独り立ちして沢山の方から仕事をさせてもらえるようになった一つの要因として「この仕事の才能がなかったから」だと思っています。その才能の無さのおかげで逆に他の人は体得できない、この仕事に大事なことを得る事ができたのです。
僕はこの業界に入った当初、整骨院に勤めました。そこでは沢山の先輩方や同期に温かくも厳しく育てて頂きました。今の自分はここでの地盤があったからだと今でも感謝していますし、忘れられません。
ただ、勤め始めた時点で目に見えて才能がなかったのです。先輩方から施術の方法を教えてもらいますが、一向にその通りに出来ません。またポイントがずれていて何度言われてもそのポイントを捉える事ができませんでした。先輩方も苦笑、そして「お前下手だなぁ〜」との叱咤激励?の毎日でした。
そんな僕を横目に同期の人は次々と課題をクリアしていきます。そして「明日からはこの施術を患者さんにしていいぞ」という現場デビューを次々としていっていました。そんな時でも僕は先輩の体を使って悪戦苦闘していて、電気を付けたりタオルを補填するなどの施術の補助をやるのみでした。
そしてだいぶ遅れてデビューしたものでした。
またその整骨院を離れた後、ある師匠に同行して勉強させてもらう時期がありました。その時も、この才能の無さは炸裂していました。
アシスタントとして同行していたのですが先生の要求に全く応えられない様に毎回怒鳴られ、直立不動で指導されていました。そして
「全然才能なくてとびきりのバカだけど、まぁお前は不器用でクソ真面目な人間だから憎めない」と、褒められてるのか諦められてるのかわからない言葉をもらったものでした(苦笑)
このように僕ははっきり言ってこの仕事の才能は全くありませんし不器用です。僕よりセンスがいい人は世の中ゴマンといます。しかし、そんな僕だからこそ得られたことがあります。そしてそれはセンスでは超えられない技術だと解りました。
それは相手の身体から徹底的に感じ取るという事です。そして施術中も逐一相手の身体の状態を感じ取るということです。
これは単に触診というレベルではありません。骨格が歪んでいるというレベルよりももっと深く、もっと微細な把握です。身体の見方が根本的に変わります。
この相手の身体から徹底的に感じ取れる力というのは世の中にある様々なテクニックより重要です。というより、この力が身に付くことにより、様々なテクニックの効果も格段に上がるのです。
僕は才能がない分、他の施術者よりすぐには上手くできませんでした。だからそれを補うにはどうしたら良いのかと常に考えていました。本当に24時考えていました。移動中も、食事の時も、誰かと遊んでいる時も。そして寝ている時も何度も夢に施術の方法が浮かび上がる事があり、その度に隣に置いていたノートに書き写してはまた寝るという事もしていました。
そんな中で、センスが無いのなら患者さんの身体に徹底的に向き合ってみよう、患者さんの身体に集中してみようと思うようになりました。また常に自分の身体を触るようにしました。テクニックを追いかけるのではなく、目の前にある身体を徹底的に見つめてみようとしたのです。
そういう日々を過ごしていると、徐々に触っている身体から原因となる身体の構造が伝わってきたのです。そして良くなっていくイメージが伝わってきたのです。するとその人固有の原因が随所にわかるようになり、今まで取れていた痛みやコリよりもさらに奥深くに隠れていた痛みやコリが取れるようになったのです。
この力が出来てからは、施術効果が倍々ゲームのように上がっていきました。
これはまさしく、センスがないから成し得た事です。センスがあったらここまで身体と向き合わなくてもある程度こなせてしまうのでそれで満足してしまい、人の身体の本質を知ろうとしないままになっていたと思います。そして周りと大差のないどこにでもいるような施術者で、今頃は集客テクニックだのリピート術だの意味のない上っ面のテクニックを追いかけて売上の上がらない自分を惨めに思っていたと思います。
これが今、僕の施術の基本となっているコリ物質のアプローチという考えに至るのです。僕がコリ物質の「アプローチ」と言って「テクニック」と言わないのは、この「感じ取れる力」のことを最終的には言っているからです。この「感じ取れる力」は世の中にある様々なテクニックに組み込む事で大きな力を発揮する、根本的な概念の事を言っているからテクニックと言わないのです。人の身体を深く事細かく感じ取れることで、文献で見たり著名な先生から手ほどきを頂いたりしただけでは気付けなかった原因が生々しくその人の身体から解るのです。そうすると他の人と同じ施術をしても施術効果の差になるのです。
これはセミナーやスクールで経験している人は実感しますが、一筋縄では体得できないものです。一度や二度、習ったからすぐに実践できるものではありません。しかもこういう感覚的なものは数値やデータではないので身に付かないと思っている人もいると思います。
しかしそうではありません。実際にその感覚を指導していくと、受講生達は確実に感覚が身に付いていきます。誰にでも身につくものなのです。そしてこれが一度身についた途端、深くまで微細な体の状態が解るので施術効果は倍々ゲームで上がっていきます。
人の身体を良くするには沢山のテクニックだけ身につけても足りないのです。その人の身体を深く微細に感じ取れる感覚を身につけることが一番のテクニックになるのです。
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セミナー開催日
3月26日日曜10時〜13時
4月23日日曜10時〜13時
5月28日日曜10時〜13時
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