50肩(肩関節周囲炎) ~肩の痛みは腕や肘にも原因がある~
50代 男性
【これまでの経過】
2か月前から特に思い当たる原因がないが徐々に左肩が痛くなり、動かせなくなる。
腕を前に上げたり横に上げる動きが出来ない。ほぼ90度くらいまでしか上がらない
日常生活では車の運転席から後部座席の荷物を取ろうとする動きやジャケットを着る時に痛みが出てスムーズに出来ない。
痛みの場所は肩の関節から10~15センチくらい腕にかけての前後。
その他の所見
肩関節外転90度の位置での肩関節外旋内旋運動は15度くらい
腫れや熱感などの炎症症状はない
【診断】
典型的な肩関節周囲炎です。いわゆる○○肩と言われるものです。
しかも外科的な原因が見当たらないので手技療法の分野が役に立つ症状です。
この患者さんの様に靭帯や関節に異常がない場合は肩、肘、手首、鎖骨のそれぞれの「関節の動きの連動性」が失われている事によって引き起こされています。
連動性とは、ある動きをする際に二つ以上の関節がスムーズに動く事です。上肢で言えば棚の上の物を取る時、腕を挙げるために肩の関節が動くだけではなく、物を掴むために手のひらを下にする様に手首が返ります。そのために肘と手首の関節も動くのです。
肘は曲げ伸ばしに目が行きがちですが、実は腕を捻じる動きの役割が大事です。
肘の関節は肘より下の腕にある二本の骨が上腕の骨と関節をなしています。この二本の骨が捻じれる事で日常の腕の様々な動き(服を着る、物を持ち上げる、歯を磨く、パソコン作業、等)がスムーズになるのです。
これが肘が動かなかった場合、手首を返すために肩の関節を無理矢理動かして手首を返す事になります。そうすると肩の関節に関係する靭帯や筋肉に負担を掛けるのです。
つまり、「肩が動かない」ということで肩や肩甲骨だけを診てはいけないのです。肘や手首または鎖骨と胸骨を繋ぐ胸鎖関節等の動きは問題ないのかを診ていきます。
この患者さんの場合、肘の動きが悪く固まっていました。ですから肘の動きが良くなるようにして、肩関節の動きにストレスがない様にしてあげればいいのです。
【施術方針】
この時に着目するのは「骨」です。動かなくなるまでの状態になった時、骨の筋肉や筋膜、靭帯が付着する所が異常に固まってしまっているのです。その拘縮してしまった骨の周りを柔らかくしてあげるのです。
今回で言えば肘の動きに関連する上腕二頭筋や上腕筋、上腕三頭筋、腕橈骨筋達の上腕側と前腕の橈骨や尺骨の固まっている場所を狙います。
また、肩関節自体の動きも悪いので肩関節を担う骨で固まっている所も治療します。具体的には上腕骨の三角筋が付着している所や上腕三頭筋の肩関節よりの付着部、大円筋小円筋の付着している肩甲骨の外の縁です。
【施術内容】
上記の施術方針の箇所をそれぞれアプローチ
【施術経過、回数】
週一回の治療を行う
6回目には動きが8~9割改善。しかしまだ痛みは少しある。車の運転席から後部座席の荷物を取るのはまだ痛くて難しい。
10回目、約3か月後にはほぼほぼ痛みもなく動かせるようになった。日常生活でも問題なくなった。
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