肩甲上腕リズムから考える 「肩甲棘内側」の重要性 ~動くという事は軸を考える~
肩の可動域が悪い。
この場合、肩甲骨の可動域の改善を考えます。それは腕の動きには肩甲骨の動きが欠かせないからです。つまり肩甲骨が上方回旋しなければ上腕骨も挙上しないという事です。これは一般的に肩甲上腕リズムとしても良く知られています。
上方回旋とは肩甲骨の上角を軸にして肩甲骨の下角が外方に回転するように上がる動きです。これにより上肢の骨が上方に向くので腕が挙上します。
この作用を良好にするために施術者は肩甲骨周囲の様々なアプローチをしたり、骨格のバランスを整えたりします。しかし、この時に「肩甲棘の内側」のフォーカスをする事があまりないのではないでしょうか?実はこの肩甲棘内側はこの上方回旋の動きにはとても重要なポイントですし、ここのストレスによって背中周りの痛みやコリにもなる重要なカギを握る箇所でもあります。
ではその理由を説明する前にまず、骨が動く事について考えます。腕を挙げたり脚を曲げたりと身体が動くためには骨が動かなければなりません。そのために筋肉が収縮して関節を動かして骨が動くのです。
そこで重要になるのは「軸」が出来ている事です。筋肉自体は単に真っすぐにしか収縮して骨を引っ張ってくれません。だからある方向に骨を動かしたいと思ったら「軸」を作らなければならないのです。例えば肘を曲げる動作は尺骨と上腕骨がしっかりと噛み合って肘関節となり「軸」を作っているから、上腕二頭筋が収縮した時に肘が曲がる様な動作が起こるのです。ですからどんな動きにも軸が存在します。
それを踏まえて肩甲骨の上方回旋の話しです。
先ほどお伝えしました上方回旋は肩甲骨上角を「軸」として動きます。しかし、肩甲骨上角には軸になる関節はありません。また、肩甲骨上角を動かない様にするための靭帯などの結合もありません。肋骨の上に乗っているだけです。そのままでは肩甲骨自体が上に上がってしまい、上方回旋は出来ないのです。ではどうやって軸になっているのか?上方回旋の動きに相反する力を持っている筋肉が上角付近に付着していて、その筋肉が引っ張る事によって軸になっているのです。
その筋肉は「僧帽筋下部」です。僧帽筋の下部は胸椎5~12番から始まり、肩甲棘の内側側に付きます。つまり肩甲骨の半分より下の脊柱から肩甲骨上角辺りを引っ張っているのです。だから肩甲骨の上方回旋時はこの僧帽筋下部が等尺性収縮運動により常にストレスにさらされているのです。また、上方回旋だけではなく、背中を丸めるような姿勢でも肩甲骨が外に開くので、安定のために下部繊維は頑張ります。(他にも安定させるための筋肉はあります)この様に、僧帽筋下部は肩甲骨回りの状態を診るのに重要な箇所なのです。そしてその付着している肩甲棘は僧帽筋下部のストレスが高いとカチカチに固まっています。肩甲棘内側周辺を触ったことがあまりないと思いますが、肩こりのほとんどの人がここもカチコチです。だからその様な人たちの症状改善には肩甲棘内側も重要なアプローチポイントとなるのです。
「肩甲骨の内側」と患者さんが訴えているのを肩甲棘周辺の訴えなのに、肩甲骨内縁だと思い込んでしまっている場合もあるかもしれません。もしくはその両方の可能性もあります。
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