産後に股関節が痛くて歩けない、胡坐を掛けない 30代女性
【これまでの経過】
出産直後より、左の股関節から鼠径部にかけての抜ける感じがあり、歩いていると引っかかる感じがしていた。
徐々にその症状は酷くなり、約7カ月経った現在は歩く時に痛くて脚が前に出なかったり蹴りだせなかったりする。また胡坐をかく事が出来なくなった。
ちなみに初産
【診断】
産後の開いた骨盤が戻る時に歪んで戻ってしまった事による痛みでした
骨盤は腸骨、恥骨、仙骨が靭帯によって繋がって出来ています。出産時、その繋がっている靭帯が緩み、骨盤の空洞を広げる事によって赤ちゃんを骨盤の中で育てています。そして出産後、緩んだ靭帯を締めて開いた骨盤が元に戻ります。
その戻る過程において日常の生活の不良姿勢などが原因できちんと元に戻らず、ずれて腸骨、恥骨、仙骨が繋がってしまう事があります。そうなると骨盤が歪んでしまい、全身のバランスが崩れて、出産前にはなかった腰痛や股関節痛、肩こり等様々な症状が現れる事があります。
この方も出産前には腰痛や股関節痛などありませんでした。骨盤が歪んで戻ってしまったので、股関節のバランスが崩れてしまって痛みを引き起こしているのです。
出産後に骨盤がきちんと戻る様に手技療法で処置をしているとこの様な事も起こりづらいのですが、日々の子育てに時間を取られてしまい、処置をする事無くここまで引きずってしまったようです。
【施術方針】
歪みによって発生している関節や筋肉、腱の緊張を取り除きました。
産後7カ月くらいで開いた骨盤は閉じます。その際に強靭な靭帯で繋がれるので、歪んで閉じた骨盤を戻すのは出来ません。よく骨盤の歪み調整など言われますが、産後7カ月以外はそんな事できません。施術を受けて効果があるような感じがする人もいますが、それはその瞬間だけです。自宅に帰った頃には元に戻っています。強靭な靭帯で繋がってしまった骨がそんなに簡単に動くわけがないのです。
しかしそれでも処置は出来ます。歪みによって関節や靭帯に負担がかかっている場所を触診や検査で見極めてアプローチする事です。また股関節の位置も変わってしまっているので筋肉が骨に付着している所も産後はストレスがかかります。そのストレスが掛かっている骨の付着部も触診で見極めてアプローチするのです。
そうする事で症状は改善します。ただ、今まで何十年と生きてきたバランスが変わっているのですから、通常の症状より比較的回数が掛かります。
ところで、この原因箇所を特定する際に背骨~骨盤~足首までの関節の連動性を診ておくと症状の改善度合いが解りやすく判断もしやすいです。
痛みやコリ等の状態確認をする時に検査で可動域を診ます。多くの治療院でも行われているでしょう。しかし、その検査も一つの関節だけの動きを診る施術者が多いです。例えば肩でしたら「腕を挙げてみて下さい」とか腰から脚だったら「前屈してみて下さい」とか仰向けに寝た状態で施術者が脚を抱えて股関節をグルグル回して検査するとか。しかしそんな検査だけでは不十分ですので施術にも活かされません。
日常の動きは複数の関節が必ず連動して動いています。一つの関節だけを動かすだけの動作などありません。ですから本当の痛みの原因を動いてもらって診察する時は複数の関節を連動して動かして検査をする事が大事です。これにより本当の状態把握が出来ます。
【施術内容】
今回の方の場合は、股関節の前側と鼠径靭帯の間の骨に原因がありました。そこを処置していくと次に大腿骨頭の後ろ側に原因が現れました。
症状が酷い場合は一カ所だけが原因という事はほとんどあり得ません。複数の原因が絡み合って症状を引き起こしています。その複数の原因も最初から全て解らない事も多々あります。原因はミルフィーユの様に何層にも重なっている事があるのでその場合は表面の原因を取り除かないと見えてこないのです。
ですから治療を進めていくと最初と痛みの箇所が変わるという事もよくあります。それは新しく悪くなったのではなく、改善が進んで奥の原因が見えてきた証拠なのです。
この方も最初は鼠蹊部に痛みを訴えていましたが、股関節の後ろ~横辺りに訴えるようになったのです。まさに改善が進んだ証拠です。
また、この原因箇所もあくまで一例です。人によって原因箇所も変わります。だから答えは目の前の患者さんにしかありません。しっかり目の前の患者さんを触診して答えを導き出すことが本当の治癒に導けるのです。マニュアル化した施術や産後の痛みは○○の箇所が原因だからと一般論だけで診ていく施術ではなかなか改善しません。人の体で同じ人はいません。だから貴方にどれだけ向き合っているかが勝負なのです。
経過
だいたい一週間に一回のペースで8回行った。歩く時の痛みや動かない状態が無くなり、胡坐も問題なく出来るようになった。
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