*

イメージの重要性1 クライアント(お客さんや患者さん)と施術者のイメージの疎通

公開日: : 最終更新日:2017/02/26 健康コラム, 施術者向け

先日、今年の本屋大賞を受賞した「羊と鋼の森」を見ました。

この本は駆け出しのピアノの調律師が悩み葛藤しながら成長していく話なのですが、僕らの仕事にも通じるものが沢山ありました。

その中の一節をテーマに話しをします。

 

主人公の駆け出しの調律師が先輩から「世の中の事を沢山知っていることは調律の仕事に役に立つ」と言われました。主人公はどういう事かと質問した時、先輩はゆで卵の例を上げました。

「ゆで卵は半熟が好きな人と、かたゆでが好きな人がいるよな。半熟卵でも、とろっとろがいい人もいればしっとりしている程度でいい人もいる。どれが正しいというわけではない。それは好みだ。要するにピアノにどんな音を求めるかそれはお客さんの好み次第なんだ。

だから硬い音がいいとか柔らかい音がいいとか、何を基準にしているのか確認しないといけない。柔らかい音にして欲しいと言われても、どの柔らかさを想像しているのかを見極めないといけない。とろっとろなのかしっとりかなのか。はたまた、半熟卵を自体を知らずに食べたことがなくて、かたゆでの状態しか知らなくて、たくさんある半熟の状態を知らないで言っているのか」

「技術はもちろん大事だけど、まずは意思の疎通だ。できるだけ具体的にどんな音がほしいのかイメージを良く確かめた方がいい」

 

まさにそのとおりだと思います。クライアントが訴えている体の状態と自分が感じているクライアントの状態のイメージを一致させることが施術の効果やアプローチを最大限に引き出すのです。

 

先ほどの例と一緒で「痛い」「凝っている」「張っている」と言ってもでも様々な状態があります。

その微妙な違いを触診や聞診、視診などで感じ取ることが大事なのです。その微妙な違いを感じ取らずにやると、本当の原因を見逃したり、もっと解消できた原因を見逃してしまいます。もしくは見当違いな施術になり、全く相手にとっては効果が感じられなかった結果となることさえあります。そしてそういう人にとっては「わかってないなこの人」となります。

ある程度の表面的な症状(東洋医学でいう表裏の表)はそこまで感じ取らなくても変えられます。例えば普段不調を訴えない元気な人が一時的に仕事が立て込んだことによる疲労や運動選手の日々のトレーニングの筋肉疲労などです。これらは気血の停滞(コリ物質)がまだ表面的で身体に根付いていないのである程度の経験がある人なら比較的どんな方法でも取れます。

しかしそれ以上の効果を求める時、相手の症状を自分のイメージと一致させないといけないのです。それは相手の状態に自分がなりきれるほどの事を言います。

 

イメージを一致させるには沢山の状態を知っていなければいけません。「疲れている」と言っても色々な状態があります。「痛い」と言っても状態や感じ方はたくさんあります。凝っている、張っているというのもコリの深さや範囲で感じ方がたくさんあります。

それを僕は相手の体に成りきることと言っていますが、相手の訴えている状態に自分がなっているように頭と身体でイメージします。それができた時、何が原因か、どうやったらそれが解消されるかが自分の体でわかってきます。そうすることで施術のチョイスや原因が的確になるのです。それがテクニック以上に大事なのです。

 

 

これは色々な人の施術を受けていて感じます。色々な方や施術方法を受けていますが、理論的に僕の身体を教えてくれるのですが、僕が教えを請うた人以外、僕が辛いなと思っている所が変わっていったり、変わる可能性を感じないのです。つまり僕の身体の状態を机上の論理だけでしか理解しようとしないので、僕の身体を本当には理解してくれていないのです。

あなたはクライアントとイメージが共有できていますか?

関連記事

ギックリ腰の治療

すべり症と狭窄症を併発して麻酔が利かない腰痛 40代男性

この方は出版された本が二冊ベストセラーになり、全国の企業やイベントから講演依頼が絶えない方です。その

記事を読む

膝の痛み

ファッションショーで膝を痛めた 20代女性

モデルとして第一線で活躍している患者様が初めてお越しになった時の症例です。  

記事を読む

肩こりは肩甲骨がほぐれるだけじゃダメ ~あなたの知らない脊柱起立筋~

背中や肩のコリは肩甲骨が重要とよく言われます。 しかし、重要なのは肩甲骨だけではありません。肩甲骨の

記事を読む

ポイントとなる隙間の場所

動作検査は可動域より関節の連動性を診る ~理想はムチの様な「しなり」~

コリや痛みの原因を特定したり、施術の目安として四肢等様々な部位の動作検査をする事があると思います。そ

記事を読む

中殿筋と梨状筋等の外旋六筋のアプローチ法

徹底的な指導で患者さんに信頼される施術者を育成するスクール3期生の授業から <コリトリスクー

記事を読む

新着記事

【実演動画有】2回の治療で治癒した五十肩(肩関節周囲炎)の解説と治療法の実演

実際に来院して治癒した半年動かせなかった五十肩(肩関節周囲炎)の原因個所を解説します。そしてアプロ

記事を読む

アライメントを調整する方へ

マッサージでほぐれないコリの正体と新しいほぐし方の理論3つ

この記事ではマッサージの様な筋肉を揉んだり押してもほぐれないコリや痛み、または何十年と付き合ってい

記事を読む

【動画有】仰向けで癒着を潰せばガチガチの肩上部(肩井)の肩こりはほぐれます

鉄の様に固まった肩上部の肩こりは筋肉を揉むのではなく仰向けで筋膜や頚椎の癒着を潰せばほぐれます

記事を読む

【ギックリ腰治療動画】寝返りや靴を履く事が出来ない腰痛を3Dストレッチで解消

酷い腰痛やギックリ腰の原因の多くは関節の連動性の欠如です。今回はその関節の連動性を戻す治療で痛みが

記事を読む

【動画有】後頭下筋群をほぐすには骨と筋膜の癒着を指圧で狙え

頭の付け根のコリをほぐすにはうつ伏せよりも仰向けです。また、反対の目の方向に押す等圧の方向を決めて

記事を読む

【実演動画有】2回の治療で治癒した五十肩(肩関節周囲炎)の解説と治療法の実演

実際に来院して治癒した半年動かせなかった五十肩(肩関節周囲炎)の原因

アライメントを調整する方へ
マッサージでほぐれないコリの正体と新しいほぐし方の理論3つ

この記事ではマッサージの様な筋肉を揉んだり押してもほぐれないコリや痛

【動画有】仰向けで癒着を潰せばガチガチの肩上部(肩井)の肩こりはほぐれます

鉄の様に固まった肩上部の肩こりは筋肉を揉むのではなく仰向けで筋膜や頚

【ギックリ腰治療動画】寝返りや靴を履く事が出来ない腰痛を3Dストレッチで解消

酷い腰痛やギックリ腰の原因の多くは関節の連動性の欠如です。今回はその

【動画有】後頭下筋群をほぐすには骨と筋膜の癒着を指圧で狙え

頭の付け根のコリをほぐすにはうつ伏せよりも仰向けです。また、反対の目

→もっと見る

    PAGE TOP ↑