ミュージシャンのコンサート後の意識朦朧 ~リラクゼーションも治療の一つ~
施術とはテクニックや理論ありきでなく目の前の人ありきです。そうすると、リラクゼーションという一つの手段もきちんとした考えの基に行えば立派な治療なのです。しかし、一般的にはリラクゼーション=単なる癒しとしか見られていません。特に治療家と言われる分野の人達はバカにしている人もいます。しかし僕に言わせれば、バカにしている治療家の方がおバカではないかと思います。今回の症例はそれを知ってもらうためのものです。
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あるミュージシャンのコンサートにトレーナーとして帯同していた時の症例です。
全国ツアーの最終日に、その方は公演が終わるなり意識が朦朧となり楽屋で倒れました。
毎回3万〜4万人の観客の期待に応えるため多くのプレッシャーを一人で抱え、様々なトラブルに遭遇しながら長丁場のツアーを乗り越えていました。ツアーが終わってその緊張の糸がプッツリと切れてしまったのです。
足に力が入らないのでスタッフに両肩を抱えられながら楽屋に戻り、目眩が起こり意識朦朧とした状態で立っていられない状態でした。
誰もが心配して見守る状態です。最終日という事でスタッフや出演者みんなで打ち上げがあるので、本人不在で打ち上げをやろうということになりました。
一緒に作り上げてくれたスタッフのために本人も打ち上げに参加したいと口にはしているのですが、いかんせん身体が動かないので、諦めて一人ホテルに戻りました。僕はそのケアのために一緒にホテルに戻りました。
みんなが打ち上げを行っている中、本人は泥の様に静かに一人ホテルで施術を受けています。公演後のケアは日々のルーティンでしたが、さすがにこの状態では施術によって元気になって打ち上げに参加できるなど本人は思っていなかったと思います。
しかし最初は死んだ様にうつ伏せになっていましたが、後半になると話す力が湧いてくるのが見て取れました。ポツポツと他愛のない事を話し始め、その声も徐々に力強くなってきました。
そして最後、起き上がった時には「あ〜〜っ!!」という爽快感の声とともに見事に復活しました。そして「元気出た!打ち上げ行こう!」とさっきまでの虚ろな状態が嘘のように張り切って打ち上げ会場に乗り込んでいったのです。
僕も打ち上げに参加させてもらいましたが、今までの長く大変だったツアーを乗り越えたという達成感を仲間達と爆発させる様に、さっきまでの状態が嘘みたいに楽しそうにはしゃいでいました。
そして楽しく打ち上げが終了しました。
日ごろ自分の施術に満足する事はないのですが、良い仕事ができたなぁとこの一瞬だけは自分に満足してあげました。
この時、僕が行ったのはリラクゼーションの施術です。心地良く受けていられる気持の良いマッサージと、リラックスするリフレクソロジーやヘッドマッサージを施したのです。
これは長いツアーで体力的なエネルギーと精神的なエネルギーを両方消費していたから、そのエネルギーを補完する手段としてそれらをチョイスしました。
この時の手段としては、普段このコラムでよく記している「骨にあるコリをアプローチ」を使用しませんでした。使用する必要ないと判断したからです。この枯渇した状態でエネルギーを補うのに最適なのはマッサージとリフレクソロジーだと判断したからです。つまり、目の前のクライアントの心身の状態になりきる事により症状の原因を掴み、その原因に一番的確な施術を考え付き、良くなっていく過程がビジョンとしてイメージできたからです。
その方法がリラクゼーションだったのです。だからリラクゼーションも単なる癒しの方法に留まる物ではありません。十分に治療の一つとなり得るのです。ただ、ここで勘違いしてはいけないのは、リラクゼーションをチョイスする理由がきちんとあるという事です。逆に言うと今から自分が施術を行う人はリラクゼーションが適していると判断せずに行うリラクゼーションはリラクゼーションではありません。それでは単なるリラクゼーションの「ままごと」です。そこが大事です。
つまりその人自身を読み解くことが大事なのです。その中でコリ物質のアプローチが必要だと思えばそれを行うのです。もし他の手技(僕でしたらマッサージや鍼)が必要だと診断すれば他の手技の使うのです。そうすれば今まで出会ったことがない症状や状態にも対応できます。
あるテクニックや理論に身体を当てはめるのではなく、その人の身体に適材適所にテクニックや理論を当てはめる事が出来る力が本当の技術力です。
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