イメージの重要性1 クライアント(お客さんや患者さん)と施術者のイメージの疎通
先日、今年の本屋大賞を受賞した「羊と鋼の森」を見ました。
この本は駆け出しのピアノの調律師が悩み葛藤しながら成長していく話なのですが、僕らの仕事にも通じるものが沢山ありました。
その中の一節をテーマに話しをします。
主人公の駆け出しの調律師が先輩から「世の中の事を沢山知っていることは調律の仕事に役に立つ」と言われました。主人公はどういう事かと質問した時、先輩はゆで卵の例を上げました。
「ゆで卵は半熟が好きな人と、かたゆでが好きな人がいるよな。半熟卵でも、とろっとろがいい人もいればしっとりしている程度でいい人もいる。どれが正しいというわけではない。それは好みだ。要するにピアノにどんな音を求めるかそれはお客さんの好み次第なんだ。
だから硬い音がいいとか柔らかい音がいいとか、何を基準にしているのか確認しないといけない。柔らかい音にして欲しいと言われても、どの柔らかさを想像しているのかを見極めないといけない。とろっとろなのかしっとりかなのか。はたまた、半熟卵を自体を知らずに食べたことがなくて、かたゆでの状態しか知らなくて、たくさんある半熟の状態を知らないで言っているのか」
「技術はもちろん大事だけど、まずは意思の疎通だ。できるだけ具体的にどんな音がほしいのかイメージを良く確かめた方がいい」
まさにそのとおりだと思います。クライアントが訴えている体の状態と自分が感じているクライアントの状態のイメージを一致させることが施術の効果やアプローチを最大限に引き出すのです。
先ほどの例と一緒で「痛い」「凝っている」「張っている」と言ってもでも様々な状態があります。
その微妙な違いを触診や聞診、視診などで感じ取ることが大事なのです。その微妙な違いを感じ取らずにやると、本当の原因を見逃したり、もっと解消できた原因を見逃してしまいます。もしくは見当違いな施術になり、全く相手にとっては効果が感じられなかった結果となることさえあります。そしてそういう人にとっては「わかってないなこの人」となります。
ある程度の表面的な症状(東洋医学でいう表裏の表)はそこまで感じ取らなくても変えられます。例えば普段不調を訴えない元気な人が一時的に仕事が立て込んだことによる疲労や運動選手の日々のトレーニングの筋肉疲労などです。これらは気血の停滞(コリ物質)がまだ表面的で身体に根付いていないのである程度の経験がある人なら比較的どんな方法でも取れます。
しかしそれ以上の効果を求める時、相手の症状を自分のイメージと一致させないといけないのです。それは相手の状態に自分がなりきれるほどの事を言います。
イメージを一致させるには沢山の状態を知っていなければいけません。「疲れている」と言っても色々な状態があります。「痛い」と言っても状態や感じ方はたくさんあります。凝っている、張っているというのもコリの深さや範囲で感じ方がたくさんあります。
それを僕は相手の体に成りきることと言っていますが、相手の訴えている状態に自分がなっているように頭と身体でイメージします。それができた時、何が原因か、どうやったらそれが解消されるかが自分の体でわかってきます。そうすることで施術のチョイスや原因が的確になるのです。それがテクニック以上に大事なのです。
これは色々な人の施術を受けていて感じます。色々な方や施術方法を受けていますが、理論的に僕の身体を教えてくれるのですが、僕が教えを請うた人以外、僕が辛いなと思っている所が変わっていったり、変わる可能性を感じないのです。つまり僕の身体の状態を机上の論理だけでしか理解しようとしないので、僕の身体を本当には理解してくれていないのです。
あなたはクライアントとイメージが共有できていますか?
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