「体を良くする」って何だろう? ~目的の履き違えをしている施術者が多い~
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施術者向け
昔、ある講師のセミナーに参加した時の話です。
その講師は最初に自身のテクニック理論を説明しました。その後受講生の一人を土台として施術を施しました。
肩こりがあると言った土台の人を何かのバランスを整える施術(詳細は覚えてないのです。その理由は後述してますが、始まって10分くらいで僕は退出してしまったので、内容を聞かずに出てしまったからです。)を行い、姿勢や可動域が改善しているのを確認しました。そして肩こり度も軽くなった感じがすると言っていました。
僕はどれくらいそのコリが減ったのだろうかと体を触らせてもらいました。ビフォーアフターを知るために施術前にも触らせてもらっていた所、まだあったので、その講師に
「この残っているコリはどうやったら取れていくか先生の方針を教えてもらえますか?」と聞きました。
講師はこの段階で質問が来ると思ってなかった様で不意を突かれた感じでしたが、
「体が整えば局所の負担が無くなるので肩こりも改善します。だから肩こりにフォーカスするのではなくこの後も同じ様に整えていきます。」と答えました。
僕「ここの状態(土台の人の訴えている箇所を指して)を特には診ないのですか?」
講師「バランスが整えば局所的に負担が無くなりますよね?理論的に体を考えていけば必要ないのです。」
僕「先生の考える体が良くなるとは何ですか?」
講師「全身のバランスが整った状態です。コリ感は本人の感覚的なものなので突き詰める必要がないです。だから局所など見る必要はないのです。」
僕「そうですか。ところで病院に頭痛を診察してもらっても血液検査や画像診断で問題なかったら健康体だと言われてしまいますよね。でも実際は頭痛があるし、それはおかしいと思うんです。だから不定愁訴は病院ではなく手技療法の分野だと言いますが、先生の考え方はそのドクターのと同じ様なものだと思うんですが。」
こんな感じでやり取りした後、講師が何を言ったのか覚えてないのですが、ここでは学ぶ事がないなと思ってそのまま退出したのです。
今回、何が言いたいのかというと
「何を目的としているのかを履き違えている施術者が多いという事です。」
理論に沿う事を施術の目的としている施術者が多くいます。そうすればこの講師が言っている様に、理論的に良い体になるのだから症状が変わるのだと思っているのです。そのために最重要視されるのが理論やその理論に基づく体の状態把握をする事です。例えば骨盤や背骨を整えるという理論があれば、その整える事を目的とします。状態把握も局所の状態よりも骨盤の捻じれ具合や背骨の捻じれ具合を診る事が目的となっています。
そしてそれらが整っているから症状は改善していると考えるのです。
もちろん、この整える方法を悪いと言っているわけではありませんしそれで治ることもあると思います。しかし、この骨盤のねじれや背骨のねじれを治すことはあくまで方法なだけで、最終目的は訴えている主訴に基づく硬結や癒着がどこにあるのかを知る事、そしてその硬結や癒着がどれだけ改善しているのかを知る事が本来の目的なのです。それらが変わらなければコリや痛みが改善しないのですから当たり前です。そこの目的を履き違えている事が問題なのです。だってコリや痛みを訴えている局所が解っていないからです。
例えば肝臓癌の手術をする事になったとした場合、癌の治療法は詳しく知っているけど実際に目の前の患者さんの肝臓のどこに癌があるかを知らないのと同じです。そんな状態で手術を行うでしょうか?そんな事ありえません。肝臓のどの位置に癌があるかを事前に正確に調べます。そしてそれを取り除くために最適な手術方法を考えます。
ですから改めて言いますが、患者さんの事を知るという事は単に何番の頚椎が歪んでいるだ肩が傾いているとかそんな事ではありません。それを知る以前に大事な事は、その方の痛みやコリを引き起こしている硬結や癒着がどこにあるか?そしてそれが施術でどれだけ変わっているのか?を知る事です。そのためには細かい所まで診れる触診力が必要です。
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