お尻から脚のシビレや膝の痛み ~座骨神経痛という言葉の罠~
前回のコラムで股関節周辺のアプローチは座骨神経痛にも関係すると記しました。その内容を症例と共にお伝えします。
しかし、前提でお伝えしたいのは多くの座骨神経痛は座骨神経痛ではないという事です。そのほとんどは股関節周囲や腰、膝の「放散痛」によるものです。それをお尻から下肢に症状を訴えていると安易に「座骨神経痛」と言う施術者が多いと思います。しかし、神経様症状ではないのですからアプローチが違うために改善に時間を要してしまっているのです。
もっと骨や関節の触診を丁寧にしてみてください、きっと骨や関節に癒着している原因が見つかります。
男性 50代
<経過>
半年くらい前から右の臀部(お尻)から鼠径部にかけてのシビレや膝の痛みが現れた。
最近になってその症状が強くなり、日常的に仕事での車の運転が辛くなる。また、階段の昇降も辛くて一段一段ゆっくりとなってしまう。
さらに来院3日前にはさらに悪化しまともに歩けないくらいの右脚全体にシビレと痛みに襲われたために来院
その他の経過として、一年前にも右膝が痛くなった。しかしその時はこの様なシビレや足全体に痛みが出る事はなかった。
<診断>
この患者さんの症状は正しくは座骨神経痛ではありませんでした。股関節と膝関節周辺に存在する「コリ」が臀部から膝への痛みやシビレを出していたのです。いわゆる「放散痛」と言われるものです。神経痛ではありません。
この患者さんは30年来ダンスを趣味でやられています。趣味ですが本格的にやられており、レッスンは頻繁で内容もハードなメニューの様です。
ダンスは膝や股関節にとても負担をかけます。その日常的な疲労が根深い「コリ」となって痛みやシビレとなったのです。
実際に一年前には膝の痛みが発症しています。これもダンスの疲労の為です。その時は運良く休息である程度のコリが除去できたので大事には至らなかったのです。しかしその時に全てのコリが除去できたわけではありませんでした。完全に取り切れていない中、ますます膝や股関節にコリが溜まっていったのです。そのためにとても根深いコリとなったので今回は脚が痺れるまでになったのです。そしてそれを半年も放って生活してたので、他の部位まで負担がかかりついには脚全体にシビレまで起こり歩けなくなったのです。
コリは侮れません。蓄積されて根深いコリになると、この方の様に痛みやシビレを引き起こす原因となります。そして別の箇所が痛い、痺れるという「放散痛」を引き起こすのです。また人によっては自律神経を乱すほどのコリにもなるのです。
<施術方針>
診断の結果からこの症状は座骨神経痛ではなく、「座骨神経痛様症状」と言うべきだと思います。
多くの施術者、またはドクターさえもこの「座骨神経痛」という言葉を安易に多用しています。足や臀部にシビレやコリを訴えると即座に「座骨神経痛」と言っています。
しかし僕が今まで診た中で座骨神経痛と言われた人が本当に座骨神経痛だったのはほんの数人でした。割合で言えば2~3%くらいでしょうか。他は単にコリのせいです。そのせいで早期に治る状態のモノも長引かせていたり、治らないまま辛い思いをさせている施術者が多いです。本当に残念な事です。
よって、この患者さんの施術方針はコリを除去すればいいのです。
特に以下の場所になります。
1股関節
2膝関節
3殿筋
4腓骨と脛骨(症状が長引いたために溜まった)
<施術内容>
実際にこの方の治療点は
1右股関節の大転子の後ろ側と大転子と上前腸骨棘の間
2右膝関節を成す大腿骨外側上顆の際
3中殿筋の裏側
4腓骨の周囲と前脛骨筋の裏側
以上の箇所でした。これらのコリを除去すれば痛みやシビレが無くなりました。
<施術経過とアドバイス>
初回の施術で完治
一週間後に来院してもらった時には全ての症状は訴えてなく、ダンスもやっていたようですが、触診したら中殿筋の裏側にはまだ少しコリがあったので除去
ダンスの疲労は溜まるので一カ月に一度のメンテナンスを提案
以上
~~~
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